Zodiac

デヴィッド・フィンチャー監督、Zodiacを見た。

ゾディアック 特別版 [DVD]

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1960年代に発生した連続殺人事件を描いたノンフィクション。
 
「事実は小説より奇なり」とは言うけれども、
それは「小説家が思いつけないような事件が起こる」ということであって、
事件の発生から捜査、解決に至るストーリーが小説のようにドラマチックであることはほとんどない(多分)。
このZodiac事件も、殺人事件や殺人後の犯人の行動は非常に「奇なる」ものだったのだろうが、
捜査自体はおそらく淡々と進められたのではないかと思う。
実際問題、この事件は最終的にも証拠があげられず、いわば「ぐだぐだの状態」で今日に至っている。
そんな40年も「ぐだぐだ」な事件の捜査がドラマチックに進められたとはとても思えない。
 
そんな事件だと思うのだが、この映画では、いっぱしのスリリングな捜査ドラマとして描かれている。
もちろん、捜査と捜査のエピソードの間は「2年後」「4年後」とどんどん年月が経っていくのだが、
そのようなタイムスパンを感じさせずに、ドラマチックな部分をかいつまんで展開していく。
それでいて、「なかなか進展しないぐだぐだ捜査に疲れ果てていく関係者たち」の気持ちも、ちゃんと伝わってくる。
こう考えてみると、確かに映画的に練られたどんでん返しはないかもしれないが、
「40年のぐだぐだ捜査」をここまでスリリングに描ききったこの映画は、
やはり見る価値があるのだと思う。
 
そして、見逃せない要素として、この映画、雰囲気が何とも言えず良い。
60,70年代のアメリカの雰囲気が、妙にデフォルメされることなく伝わってくる。
って、その時代にそこにいたわけではないのだが、
きっとこんな感じだったんだろう、と素直に思わせてくれる。
そして、良い雰囲気には、やはり随所に見られる独特のカメラワークが多分に関係しているのだろうと思う。
オープニングのクルマの車内、走行中のクルマの真上からのアングルなど、
「おっ」と思うような映像が頻繁にあらわれる。
何気にフィンチャー監督の作品はほとんど見てきたが、
別に映画に詳しくない僕でも、フィンチャー監督独特のカメラワークであることはわかる。
まぁ、やっぱり、好きですな。
 
というわけで、もう一回、じっくりと見たい映画。
 
#一件、追加。
「ダーティーハリー」がこの事件に強く影響を受けて製作されており、
捜査継続中ながら公開されたという事実を知らないと、理解できない場面がある。
僕は実は「ダーティーハリー」を見たことがなく、その事実も知らなかったので、
ちゃんと味わえなかった場面がいくつかあった。
というわけで、これを読んでから見る人は、そこまでちゃんと味わうことができるはず。
ま、そもそもあまり読まれないブログなんすけどね。