二郎

関東の男子大学生の間ではラーメン「二郎」がカリスマ的人気を誇っているらしいが、
関西で生まれ育ち、関西の大学に行っていた僕は、当然大学時代に入ったことはなく、
就職して関東に出てきてからも足を踏み入れたことはなかった。
 
その「二郎」が実は現在の住まいのすぐ近所にあるのだが、
ヨメさんが毎日うまい晩御飯を作ってくれる身分であるため、
今までずっと行かずじまいだった。
そもそも、ヨメと2歳のムスメと一緒に入る雰囲気ではない。
 
しかし、最近ロンリーな夜を満喫する機会があり、
ここぞとばかりに「二郎」に行ってきた。
 
店に着くと、予想通りの行列。
20分ほど待って、ようやく席に着くことができた。
 
客層は、基本的に男子大学生で、
体育会系のヤツから、ヤンキーっぽいヤツ、オタクっぽいヤツ、こ洒落たヤツなど、
非常にヘテロなキャラクターのヤツらが、
互いの存在を尊重するかのように、渾然一体と共存している。
ああ、この雰囲気、懐かしいなあ。
大学時代を思い出す。
 
最初は小ラーメンを頼もうかと思っていたのだが、
カウンターで食べているヤツの小ラーメンらしきものを見て愕然とした。
ちょい、その山盛りの、「小」っすよね!?
さっき、「小ラーメンお待ち」って、店員さん言ったよね!?
(と聞いたわけではないが)
 
無理、無理!
 
急遽、「プチ二郎」に変更した。
「プチ」という名前と、
前に座っている女の子の注文が「プチ二郎」であることに対し、
若干の屈辱感を感じないではなかったが、
アラサーとアラフォーの間のおじさんの胃袋は、
どうしてもその量を飲み込めるだけの自信がなかった。
 
席につき、ようやく出てきた「プチ二郎」は、
それでも通常のラーメン屋の大盛りくらいの量はある。
しかしまあ、これくらいなら何とかなりそうだ。
いただきまーす。
 
むむっ。
濃厚な背脂スープ。
太いがパサパサではない麺。
分厚くトロトロのチャーシュー。
噂に違わず、なかなかイケるのではないか。
コンモリ盛られた野菜をムシャムシャと食べていると、
ヘルシーなんだかメタボなんだか良くわからなくなってきた。
 
途中から隣に座った男子は、大ラーメンを注文した。
そして出てきたそれは、まさに「まんが日本昔話の山盛りごはん」のように、
野菜のチョモランマがそびえていた。
 
君、どんだけ腹減ってんねん。
無茶すんなよ。
 
しかし、チョモランマがずんずん低くなっていく様を横目で見ていると、
これを見て驚いている僕のほうが感覚がおかしいのだろうかと思えてきた。
周りでは、「小ラーメン」という名の富士山が普通に消化され続けているのだ。
それに比べれば「プチ二郎」なんて、大文字山をちょいと登った程度にすぎない。
 
しかしまあ、「プチ」にしても、おじさんには少々つらいものがあった。
またいつか、体調が良いときに、「アレ食ってみるか」という気になったら、
食べにいこうと思う。