カトマンズ物見遊山

ちょっと更新に間が開いたけど、苦難のバス紀行を乗り越えてカトマンズに到着したところから。
(前回はこちら)苦難のバス紀行 - マルコジみそ
 
カトマンズ到着の翌朝、大学時代の友人との待ち合わせ場所に、再び行ってみた。
すると…。
 
おぉ、いたいた!
まあ、待ち合わせ時間と場所さえ指定していれば、当然出会えるわけである。
だが、やはり渋谷のハチ公前なんかの待ち合わせとは違い、はるかネパールで出会うのはなかなか感動的であった。
会うなり、随分ボロボロになったな、と言われた。
確かに、言われてみれば、顔は陽灼けと汚れで真っ黒、ヒゲは伸び放題、さらに先日からの下痢でゲッソリしていたわけで、見ようによってはヤバい人に見えたかもしれない。
 
カトマンズの数日間は、友人と行動を共にした。
一人の時のように自由気ままにフラフラすることはできないが、やはり話し相手がいるというのはいいもんである。
比較的、平和に観光することができた。
 
まずは、丘の上にあるスワヤンプナート寺院に行ってみた。
結構長い階段を登る必要がある。
寺院に描かれた独特の目を見ると、ネパールに来たことを実感させられる。
参拝客と同じように、寺の周りをぐるっと一周した。
帰り、階段を下りるときに、階段の横に小さい地蔵があることに気がついた。
よく見ると、「念ずれば花ひらく」と日本語で書かれている。
どういういきさつで、ここに置かれたのだろうか。
 
別の日には、カトマンズ近郊のナガルコットに行ってみた。
ナガルコットは、ヒマラヤのビューポイントである。
本来はカトマンズ市内からも見えるはずだが、カトマンズは、排気ガスによる大気汚染がひどいことで有名な町なのである。
よほど天気の良い明け方や、ストでタクシーが走らない日にしか、市内からヒマラヤを見ることはできない。
カトマンズ郊外は、子ヤギが草を喰んでいたりする、のどかな風景がひろがっていた。
ナガルコットでは、雄大なヒマラヤの姿を眺めることができた。
 
また別の日には、バスで近郊のパナウティという村に行ってみた。
ここは古都ということだが、かなり小さな村であった。
小さいが、まとまって存在する寺の数々は、確かに古都を感じさせるものであった。
帰りのバスは地元の人達で満席。
少しばかりの好奇心もあったので、地元の人達と一緒にバスの屋根の上に乗ってみた。
少し怖かったが、バスの屋根に乗るなんて、そうそう体験できるものでもなかろう。
 
さらに別の日、プチハイキングと称して、カトマンズの近くの小さい山に登ってみた。
何の変哲もない山であったが、カトマンズの町を見下ろすことができた。
何故か、山の中で子供と出会った。
何やら荷物を運んでいる様子で、明らかに遊んでいるわけではなさそうだ。
この付近で暮らしているのだろうか。
 
友人が日本へと帰っていった後、数日間は一人でカトマンズの町をブラブラした。
ブラブラしていると、15才くらいの男の子が、案内をしてやるよと言ってきた。
明らかに、案内料や商売が目的なのだが、まあ騙されてみるのも悪くないかなと思い、案内してもらうことにした。
案内してもらってるうちに、ちょっと一休みしようと言われた。
二人で近くの食堂に入っていくと、男の子はいきなり酒を注文した。
酒と言っても、白く濁った韓国のマッコリに近いどぶろくで、プラスチックのバケツのような容器に入ってでてきた。
このような勧められた酒など、睡眠薬でも入れられている可能性だってあるのだが、ついつい飲んでしまった。
インド人より比較的温和なネパール人に対し、少し気を緩めてしまったのかもしれない。
幸い、特におかしな症状は現れなかった。
しかし、酒が強かったのか、長旅の疲れか、結構酔いが回ってしまった。
 
数時間案内してもらった後、男の子の家族がやっているお店でお土産を買っていけと言ってきた。
やはり、それが目的か。
そう思ったが、隠れたスポットなどにも連れていってもらったので、少しくらい買ってやろうと思い、ついていった。
で、連れて行かれた先は、とても薄暗い倉庫のような一室。
出口は、入ってきた狭い扉が一つあるだけ。
気がつくと、数人の大人が周囲にいた。
しまった、と思ったが、もう遅い。
逃げ出すことは不可能に近そうだったので、怒らせないように、適当に安いものを買って退散しようと思いをめぐらせた。
予想どおり、高いマンダラの巻物などを売りつけてきた。
要らない、要らない、と言いつづけていると、「何故?日本人、みんな買っていくのに」と、徐々に不機嫌なそぶりを見せはじめた。
いや、これは日本人がこういう状況に弱いことを知った上の常套手段だ、騙されてはいけない、と自分に言い聞かせ、ひたすら粘り続けた。
買え、要らない、の問答を続けているうちに、ついにあちらも折れたようで、かなり安そうな紙切れのマンダラを出してきて、「これなら?」と言ってきた。
この辺りが潮時かな、こんな紙切れにしては高過ぎるが、まあ、男の子の案内料だ、と思い、それを買うことにした。
店員はかなり不満気であったが、いい買い物したよ、ありがとう、じゃ、と笑顔と勢いで狭い出口からお店を後にした。
やれやれ、何事もなくて良かった良かった。
今にして思えば、ずいぶん不用心に人に付いていったもんだと思う。
 
友人から数日遅れて、僕はネパールの空港から飛行機でカルカッタに飛んだ。
飛行機の窓からは、地上で見るのとは比較にならないくらい見事なヒマラヤの壁が見えた。
カルカッタが、今回の旅行の最後の地になる。
(つづく)