まったりカルカッタ

 
カトマンズから飛行機でカルカッタに飛んだ。
(前回はこちら)カトマンズ物見遊山 - マルコジみそ
 
今では正式にコルカタと呼ばれるこの町は、「インド一生活臭のする町」と言われたりするらしい。
確かに、これまで巡ってきた観光地然とした町とは違い、ビジネス街もある「地に足のついた町」であった。
 
迷わず、有名な安宿街であるサダルストリートへ向かった。
気がつくと、今回の旅行で、バンコクカオサン通りニューデリーのメインバザール、カトマンズのタメル地区、そしてカルカッタのサダルストリートと、バックパッカーの間で著名な安宿街を渡り歩いていた。
別に筋金入りのバックパッカーを目指している訳ではないのだが、このような安宿街の周辺には食堂や日用品店が集中して便利なので、自然とこういう街に足が向くのだ。
そのサダルストリートだが、印象としては、他の安宿街ほど「バックパッカーの溜まり場」という感じはなかった。
どことなく小ぎれいというか、普通の街並みというか。
まあ、近くに食堂や日用品店は適度にあったので、僕としては満足であった。
 
適当に、見所と言われるスポットに行ってみた。
まず、カーリー女神をまつっているというカーリー寺院へ。
すごい人ごみだった。
日本人と見るや、貧しい子供達がわっと群がってきた。
むやみに物を与えるのは彼らのためにならないという考えで、「バイバイ」などと言って立ち去ろうとした。
しかし、ここでは本当に多数の子供に取り囲まれてしまい、どこまでも付いてきて、勝手に手まで握られる始末だった。
これには参った。
多分、彼らも日本人がこういうのに弱くて、つい何かを恵んでしまうのを知っているのだろう。
僕は、ともかく彼らが諦めるまでどこまでも歩き続けた。
そのうち、周囲の子供はいなくなった。
これにどっと疲れてしまったので、その辺のチャイ屋でチャイを一杯。
とても甘いチャイを飲むと、不思議と疲れが癒される。
この旅行で、一体何杯のチャイを飲んだのだろうか。
 
また、大きなイスラム寺院、ナコーダモスクにも行ってみた。
ここは結構閑散としていて、静かなモスク内を落ち着いて見物することができた。
内部には泉があり、何人かの老人が泉の周辺にぽつねんと座っていた。
見てると、老人の一人が僕に手招きをした。
横に座れ、というジェスチャーをしたので、座ると、何やら英語ではない言葉で語り始めた。
言っていることはわからなかったが、落ち着いた語り口から、何らかの説法か訓示を述べている様子だった。
しばらく聞いてから、「そろそろ行くよ」と言って立ち上がると、老人は何を要求するでもなく、ただうなずいて再び泉を見つめていた。
 
そういえば、インドでは映画館で映画を見るのも楽しみの一つと言われているが、まだ一度も見ていないことに気がついた。
そこで、宿の近くの映画館に、適当なチケットを買って入ってみた。
その映画は全てヒンディー語であったが、単純な勧善懲悪のストーリーなので、言葉がわからなくても筋はよくわかった。
そして、噂どおり、映画館でのインド人の反応はとても面白いものだった。
見るからに悪そうな奴が美女を連れ去ると、ものすごいブーイングの嵐。
サングラスをかけたヒーローが車から降りてくる場面では、拍手喝采
ラブシーンでは、ヒューヒューと口笛ではやしたてる。
そして何故かヒーローも悪役も含めてダンスが始まるのだが、一緒に手拍子をしたりする。
そういう訳で、映画そのものというより、観客のインド人たちが見ごたえがあった。
 
しかし、僕の中でカルカッタの印象で一番大きいのは、カルカッタ公園であった。
この公園はとても広く、よく整備されてとても美しい。
サダルストリートにも近いので、かなりの時間をこの公園でぼんやりと過ごした。
あるとき、花がたくさん植えてある庭園のベンチに寝そべってぼけーっとしていた時のこと。
ふと気がつくと、老人が座った車椅子を、看護師らしき人物が押しながら庭園を散策していた。
老人も看護師も真っ白な衣装で、何を語らうでもなく、非常にゆったりとしたペースで歩いていた。
せかせかと商売根性丸出しのインド人ばかり見てきただけに、このように静かで豊かな精神生活を営んでいる姿は、はっとさせられるものがあった。
まあ、現実には、このような生活は上流階級の人々のものなのだろうとは思うが。
 
そんなわけで、僕はカルカッタを最後に、日本へと帰国した。
正直、自宅(下宿先のアパート)に戻ったときは、疲れがどっと出た。
まあ、でも、この旅行が、僕にとっては一番思い出深いものだ。
 
後日談。
カトマンズへ向かうときの下痢は、実は帰国後もくすぶり続けた。
病院に行って診てもらったが、特におかしな病気に感染してはいなさそうで、じきに直ると言われた。
実際、そのうち下痢は治まり、無事に現在の会社の入社式に出席できたのであった。
 
これでインド&ネパール旅行記はおしまいです。
かなり長い自己満足の駄文になってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。